ブラックジャックを読みました。

2025年2月16日

ひさしぶりに、手塚先生のブラックジャックを読みました。
あらためて、ブラックジャックはヒューマニズム溢れる傑作だと思いましたね。
そして、子どもの頃に読んだときとは、また違った感想がありました。
今回は、そのあたりのことを書いてみたいと思います。

やはり、ブラックジャックはカッコいいです。

夏休みの初日、配偶者がふと、ブラックジャックを読みたいと言い出しました。
たしか、文庫本版があったハズだと、物置からサルベージです。
そして、ワタクシも文庫本版、全12巻を読了しました。

ひさしぶりに読んだブラックジャックは、完全に昭和の人でしたね。
とにかく、すべてにおいて厳しくて、それはまさに当時の体育会系のソレです。
身体が悪くて友達から笑われるという患者に、笑い返してやれないのか!?と言い放ったり。
食事を遠くに置いての強制リハビリとか、わがままな患者を平手打ちにしたりとか。

特に、生き延びることに関してのこだわりには、壮絶なモノがありますね。
昔は、こんなスパルタがまかり通っていたことを、懐かしく思いながら読み始めました。

とはいえ、読み進めていくと、そのあたりの違和感はいつの間にか消え失せます。
そして、やはりブラックジャックはカッコいいなぁと思いましたね。

医者として己の流儀を曲げない、完膚なきまでのプロフェッショナル。
クールでニヒルな科学者ながら、義理堅く人生の機微にも通じた人情家の一面もあり。
権力や権威に媚びない一匹狼にも関わらず、人並みにさみしがり屋でなかなかのマザコン。
正に、ブラックジャックは古典的なヒーロー像そのモノなのですね。

子どもの頃にむさぼるように読んで、将来はB.Jのような大人になりたいと思ったモノです。
手塚作品数あれど、個人的にはブラックジャックがダントツで、一番好きなのですね。

登場人物に対する感じ方が変わりました。

ブラックジャックの登場人物では、子どもの頃はドクターキリコがお気に入りでした。
彼の、あの諦念がよくて、生にこだわるブラックジャックが青臭くすら感じられたモノです。

しかし、この歳になって読み返したら、キリコに対する感じ方が変わっていましたね。
B.Jの言葉を借りれば、キリコはすこし見切りが早すぎなのかもしれません。

逆に、B.Jがこだわり続ける泥臭いまでの生への執念のほうが、自然かもしれないと感じました。
これについては、私自身の死に対する体験が影響しているのかもしれません。

また、ピノコに対する感じ方も変わりましたね。
子どもの頃は、幼稚で生意気でトラブルメーカーな彼女が、ぶっちゃけ苦手でした。
ところが、今読み返してみると、ピノコがとてもかわいく感じられます。

無邪気にみえる彼女ですが、実は健常者ではないコトの悲しみを抱えた人なのですね。
子どもの頃は、このピノコの心情に気づくことができませんでした。
そして、自分の命を拾ってくれたB.Jに対する彼女の敬愛に、ジーンとしましたね。
また、B.Jもそれゆえに、彼女を愛おしんでいることがよくわかりました。

歳を重ねて読み返すことで、また新しい気づきがあるブラックジャック。
やはり、手塚作品は本物であると、あらためてそう思いますね。

ヒューマニズムをリアルに描いた傑作だと思います。

全編に貫かれている生と死についてのテーマは、あいかわらず重厚です。
しかし、それをコミカルにサラリと、かつドラマチックに表現しているトコロは秀逸ですね。
もちろん、荘厳で緻密でスキのない、火の鳥のような青年向けの作品も素敵ですが。
あくまで少年漫画で、誰にでも読みやすくたのしめるトコロが本作の魅力だと思います。

そして、ブラックジャックの真骨頂はヒューマニズム。
手塚先生の作品世界を貫く正義や慈愛は、美しく不変であることを再認識しました。
この、シンプルでまっすぐな作風が、手塚作品の一番の魅力なのでしょうね。

そして、そう考えると、やはり手塚先生は少年漫画の人だと思います。
誰もが憧れるヒーローが出てくる少年漫画、その極まりがブラックジャックなのかもしれません。
B.Jは大人の私が見てもカッコいいですし、現に彼に憧れて医者になる人がたくさんいますしね。
私の知り合いでも、B.Jにインスパイアされたドクターは、三人は下らないです。

少年漫画をこの域にまで引き上げた手塚先生は、本当に偉大ですね。
そして、多くの志ある若者に影響を与え続けるブラックジャックは、人類の宝といえるでしょう。
図書館や児童館に本作を全巻揃えておくのは、大人としての義務かもしれないです。

ちなみに、B.Jで一番好きなのは、本間丈太郎先生のお嬢さんを助ける話ですね。
あの回はまず、オープニングの夏の木々が美しすぎます。
しかし、残念ながらこの話は、手持ちの文庫版には収録されていません。
秋山書店版のブラックジャック単行本全25巻、大人買いするか迷い中です。