自然対数の話

今回は数学の話、長年疑問に思っていた自然対数のことを書きます。
自然対数については、理系以外の人にはあまりなじみがないかもしれません。
私自身、半分忘れかけの状態でしたが、できるだけわかりやすく書いてみたいと思います。
長年の私の疑問と、それが解決できたうれしさが伝われば幸いです。

長年、疑問に思っていたことを思い出しました。

先月、実家に行ったときに初歩のラジオ技術という本をサルベージしてきました。

こちら、真空管やトランジスタラジオの自作方法が、とてもわかりやすく解説された良書です。
ラジオ少年だった中学生のころに、街の本屋でみつけてゲットしたのでした。
しかし、悲しいことに私が生まれ育った街には電子部品を扱うお店がなく、そして本書は実戦で使われないまま、実家の本棚に埋もれていたのでした。

ところが、いま住む街には山形の秋葉原と言われる電子部品屋さんがあります。
であれば、40年ぶりに活用できるかもしれないと思って、実家から持ってきたのでした。

ひさしぶりに目を通す電子回路のページ、よくわからないところはネットで調べながらです。
そうしたところ、大学生のときに格闘したラプラス変換なる言葉が出てきました。
そして、気づけば微積分でネットサーフィン、そこでふと、長年疑問に思っていてそれっきりになっていたことを思い出したのでした。

それは自然対数、そう、y=Logx のロガリズムです。
底がeの対数を自然対数といいますが、どうして底がeだと自然というのかが長年の謎でした。

ちなみに、対数というのはy=a^xのときのx、要は桁数のことで、このときのaを底といいます。
また、eというのは2.7182818…となる無理数(=割り切れない数)です。
そして、このeは円周率πと同じとても重要な定数(=数学上の決まりきった数)だったりします。

私たちにとって一番身近な対数は、地震の規模を示すマグニチュードでしょうね。
また、音の大きさを示すデシベルも対数です。

それで、自然対数を自然と呼ぶ理由を調べるだけなら、いまなら検索でサクッと終わるところですが、しかし悲しいことに、私の頭が「そもそも自然対数って何だったけ?」の状態なのでした。
30年近く数学に触れていなかったとはいえ、ここまで浦島太郎になった自分に愕然としつつ、まずは対数についての復習から始めたのでした。

記憶と現実に食い違いがあります。

生まれて初めて自然対数なる言葉に触れたのは、高校生のときでした。
対数は、最初に常用対数(底が10の対数)で習い、ある日突然、底がeの自然対数が登場します。
そしてそこから先、教科書やテストに出てくる対数はすべて自然対数になってしまうのですね。

底がeの自然対数だと、何かが劇的にかんたんになるという記憶はかすかに残っています。
しかし、その何かがまったく思い出せません。
あれだけ数学は得意だったハズなのに、ここまで無能になってしまった自分にがっかりですね。

ということで、まずはネットや手持ちの微積分の本で確認です。
そうしたところ、劇的にかんたんになるのは対数関数の微分のようでした。

しかし、私の記憶では、自然対数は微積分を習得する前に習ったような気がします。
どうにも、記憶と現実にギャップがあって釈然としません。
この悶々に決着をつけるために、またもや実家から高校時代の教科書をサルベージしました。

そして、数1からつらつらと読み返してみました。
そうしたところ、やはり自然対数は微分をかんたんにするために登場していたのでした。

記憶の食い違いが、自然と呼ばれる理由でした。

自然対数は、微積分の教科書で初登場していました。
であれば、これを習ったのは高校3年のときになります。
しかし、私の記憶では高1か、遅くとも高2の初めには習っていたような気がするのですね。
いったい、この記憶のギャップは何なのでしょう?

ちなみに、この自然対数を用いた数学のテクニックは強力で、これを用いることでyの変化でyが変化するモノ、たとえば空気抵抗を受ける物体の落下速度やバネの運動、あるいは住宅ローンなどの複利モノの設計がサクサクできるようになります。
この、yの変化でyが変化するをもうすこし詳しく解説すると、

  • 落下速度を決める空気抵抗は落下速度で決まる。
  • バネの長さを決める荷重はバネの長さで決まる。
  • 金利を決める元本は金利で決まる。

ということで、これらの問題は中学校で習う連立方程式では解くことができず、最低でも高校で習う微分方程式が必要となり、その微分方程式を解くために自然対数の特殊な性質が活用され、その答えがy=Logxになるのですね。
そして、このyの変化でyが変化するといった事象は自然界に溢れているので、おのずとeが底の対数は自然対数と呼ばれるようになったと、まぁこれがネットに書かれているところの自然対数が自然と呼ばれる理由だったりします。

現に私自身、大学に進学してからは、この自然対数をあたり前のように使いまくっていました。
そして、いつの間にか昔から知っていたような気になっていたのですね。

と、ここでハタと気づきました。
なるほど、昔から知っていたと勘違いするぐらいに自然な存在だから自然対数なのですね。
自然対数に出会って37年、やっと長年の疑問にスッキリと納得することができました。

なお、eはネイピア数といい、元々は複利の計算をする過程で発見された数とのことです。
このようなことをすぐに教えてくれるネットは、本当に便利ですね。
そして、もし高校生のときにネットがあったらと思ってしまいました。

いずれにしても、ひさしぶりに触れる数学の世界は楽しいです。
そして、この手はやはり教科書が一番わかりやすいですね。
微積の他に確率統計もほとんどうろ覚えですし、この機会にキチンと復習してみたいと思います。