あるオートバイ事故について

事故の記事をみかけました。

SNSで、あるオートバイ事故の記事をみかけました。
Yahoo!のニュースにも載っているので、ご存じの方も多いと思います。

ツーリングを楽しむ夫婦2台のBikeに、ワゴン車が追突したという事故です。
追突された奥さんは、ワゴン車や他の後続車に轢かれ死亡しました。
原因は、ワゴン車の運転者によるスマホながら運転との由。
同じBike乗りとして、なんとも痛ましい事故ですね。

SNSの記事もニュースも、ながら運転をしていたワゴン車運転手を糾弾する内容です。
被害者の夫は、「妻は殺された」と叫んでいます。
そして、「こちらには何の落ち度もなかった」とも述べられています。

確かに、ぱっと見はワゴンの運転手ふざけるなでしょう。
生き残った旦那さんが憤るのも理解できます。
事故原因のアイテムがスマホというのも、この論調に拍車をかけているのでしょうね。

しかし、これらの主張には少々の疑問を感じます。
現実は、スマホに限らずながら運転しているドライバーは珍しくありません。

勿論、スマホで漫画を読みながらBikeに追突した運転手の非は免れないでしょう。
しかし、だからといってオートバイ側にはまったく落ち度はなかったのでしょうか?
被害者夫の、「こちらには何の落ち度もなかった」の発言には、私は凄く違和感を覚えます。

確かに、法律上はまったく落ち度はなかったのかもしれません。
しかし、Bike乗りの視点からみれば、落ち度だらけのように思います。

高速道路を70km/hで走行する危険性

まず、私が目を疑ったのが、オートバイの走行速度が70km/hだった点です。
ぶっちゃけ、これでは自殺行為ですね。

オートバイは車体が小さいので、他の車両より認識されづらいのは常識です。
これは、右直事故の主要因のひとつですし、自動車学校でも詳しく習う項目です。
ましてや、今回の事故は夜間に起きました。
夜間であれば、後続車から認識されるのはオートバイの小さなテールライトひとつですね。
もし、前を走るのがオートバイではなく大型のトラックだったのなら、スマホ漫画に夢中の運転者でも気づくことができたのではないかと思います。

事故の現場は、私も何度か走ったことがありますが、実に見通しの良い直線です。
通行するクルマも、90~100㎞/hで流れているようなところです。
そのような中、走行車線をオートバイで70km/h走行。
しかも夜間。
正直、いつでも轢き殺してくださいといっているようなモノですね。

ちなみに、私はBikeで高速を走るときは、メーター読み120km/hかそれ以上で走ります。
追突することはあっても、されることはまずない速度ですね。
逆に、70km/hでの走行など、恐ろしくてとてもできません。

迫りくる後続車を認識できない疑問

同じBikeに乗るものとして、ここもかなり疑問ですね。
死亡した女性ライダーは、どうして追突されるまでワゴン車に気づけなかったのでしょう。

ワゴン車が200km/hを超える猛スピードで走っていたというのなら、少しは理解できます。
しかし、記事によるとワゴン車の走行速度は100km/hとのことです。
正直、高速道路では普通の速度ですね。

対して、追突されたオートバイの速度は70km/h、その差は30km/hです。
これを分速にすると500mですね。
見通しの良い高速の直線なら、500m後方の車両はバックミラーでも認識できます。
そして、そこから追突されるまでは1分の時間があったということです。

となると、追突された女性ライダーは、1分間も後方確認をしていなかったことになります。
これも、ぶっちゃけ信じられないですね。

私なら、30秒に一度はバックミラーで後方をチェックしています。
それも、無意識にです。

というか、意識してチェックしなくても、迫りくるワゴン車の影がバックミラーに映り込んで、身に迫る危険に気づきそうなモノですけれどね。
しかも、夜間であればバックミラーにヘッドライトの光が映り込みますから、なおさら気づきやすいと思われます。
一体、この女性ライダーは、どんな感覚でBikeを運転していたのでしょう?

同行していた旦那さんによると、二人は事故直前まで無線で会話を楽しんでいたそうです。
女性ライダーは、会話に夢中で身に迫る危険に気づけなかったのかもしれません。
となると、追突されたオートバイ側も、ながら運転していたワゴン車の運転手と同じ穴の狢なのではとまで思ってしまいます。

法律を守っても命は守れない

事故の記事を読む限り、私には、この夫婦にはオートバイに対する危険性の認識が低かったようにしか思われません。
きつい言い方ですが、事故は起こるべくして起こったという感じですね。

オートバイは危ない乗り物です。
ましてや、それで高速道路を走るなど、死と隣り合わせの行為です。
夫婦で仲良く会話などを楽しんでいる場合ではないと思うのですね。

妻を亡くした夫としては、そのやり切れなさを、ながら運転糾弾キャンペーンのエネルギーに転換するしかないのでしょうし、その立場は理解できます。
しかし、いくら糾弾したところで亡くなった人は帰ってきません。
また、ながら運転も撲滅できないと思います。
なんとも、虚しさだけが残りますね。

頭部を轢かれた女性ライダーは、顔面は原形をとどめず脳みそがはみ出していたそうです。
何とも悲惨ですが、オートバイは常にそういう悲劇と紙一重です。

「こちらには何の落ち度もなかった」
後から何度言ったところで、起きたことは元には戻せません。

いくら法律を守っても、法律はあなたを守ってはくれないのです。
そして、この意味が理解できない人は、オートバイに乗るべきではないと思います。