カタナの想い出
2010年から4年間、GSX1100S、カタナのイレブンに乗ってました。
このBikeも、私のオートバイ人生を語るのに欠かせない1台です。
結論から言うと、とてもいいBikeでした。
あの夢のような日々をしみじみと振り返りながら、想い出を書いてみようと思います。
ひょんなことから付き合いが始まりました。
スズキ GSX1100S 通称カタナ、長いこと私の憧れのBikeでした。
いや、私以外にも憧れた人はたくさんいたでしょう。
1980〜90年代にかけて、このBikeはアイドル的人気を博しました。
まず、なんといっても、カタナは格好がいいです。
この世に存在したすべてのBikeの中で、個人的にはベスト3に入る格好良さですね。
カタナ以前のスズキのフラッグシップはGSX1100E、通称ベコでした。
TCSS搭載のエンジンは105PSを叩き出す、当時としては超高性能マシンでした。
ただデザインが、、、ベコという愛称がすべてを物語っていますね。
そこで、ハンス・ムートがデザインに参画して生まれたのがカタナ。
このあたりは、Bikeファンなら誰でも周知のトコロとは思います。
発表当時は、ちょっとやりすぎの感もあったそのデザイン。
私も雑誌のグラビアで初めてみたときは、ちょっとピンときませんでした。
しかし間もなく、その格好良さは誰しもが認めるところとなります。
まずは、端正ですね。実にハンサムなBikeです。
同じムートデザインのBMW R100RS もハンサムですが、それに匹敵する美顔ぶりです。
かつ、単に整っているだけではなく妖艶、なにかたまらない色気を感じます。
そして、どこか凶暴性というか、危険な雰囲気がにじみ出ています。
さすが、日本刀をモチーフにしているだけのことはありますね。
とにかく、オートバイのデザインとして、これ以上はない完璧さですね。
端正で妖艶で危険、当時のBike乗りがBikeに求めるモノをすべて兼ね備えたデザインです。
ということで、多くのBike乗りが、カタナのこの容姿に心を鷲掴みにされたのでした。
もちろん、私もそのひとりです。
カタナのグラビアを眺めては日々、それを駆る己を妄想していました。
Bikeコミックでも、カタナの立ち位置というのは格好良すぎでしたね。
バリバリ伝説の秀吉や、あいつとララバイの首都高キング。
主人公と人気を二分するデキる脇役が駆るBike、それは常にカタナでした。
そして、キリンのあの主人公が駆るに至って、カタナ人気はピークに達しました。
そんなところのイメージもあって、カタナに対する熱い想いは募りゆくばかりでした。
しかし、私が大型二輪免許を取る頃は、カタナはすでに現役引退。
アニバーサリーモデルをゲットするタイミングも合わず、夢は夢のままとなっていました。
ところが、思い続けていれば、夢はいつしか叶うモノです。
2010年の初め、友人からしばらく預かってもらえないかと打診がありました。
もちろん二つ返事でOK。思い続けて30年、ついにカタナオーナーの夢が実現したのでした。
憧れの彼は、初春の雪の日にやってきました。
2010年の4月某日、ついにカタナがやってきました。
その日は季節外れの大雪だったことを、いまでも覚えています。
状態としては、ナンバーなしの車検なしです。
名義変更して預かってくれとのことでした。
エンジンは一発始動、タイヤも問題なさそうです。
行きつけのBike屋さんで手続きを済ませ、ひと月後に晴れて雇われオーナーになりました。
ブルーとシルバーのツートン、私が一番好きなカラーリングでした。
早速、CB750Fと並べてみました。
カタナ、それもイレブンとなると大柄なイメージがありますが、実際はそうでもありません。
前傾も、CBと900SSの中間ぐらいです。
ハンドルの切れ角も深くて、900SSより取り回しが楽なぐらいでした。
足回りは神戸ユニコーンのキットで18インチ化されています。
正直、足回りをいじったBikeは好きではないのですが、これは例外でしたね。
オリジナルの雰囲気を損なわず、素晴らしい走行性能をみせてくれました。
マフラーは定番のKERKER、これもすごく良かったです。
雷鳴のような900SSとも刹那的なCBのヨシムラとも違う、暴力的な排気音がたまりません。
ゴー、ガリョォォォと、まるでキリンの世界そのもので、痺れました。
ということで、もはや最高の玩具を手にした男の子の状態です。
休日だけでは飽き足らず平日深夜に至るまで、カタナであちらこちらを走り回りました。
最高級のクルーザーでした。
じっくり付き合ってみての結論は、最高級のクルーザーでした。
戦闘的なイメージのカタナですが、実際はそんなに尖ったBikeではないです。
やはり百聞は一乗りに如かずですね。
とにかく、乗り心地がとても良いです。
高速を400km近く一気に走って、耳鳴りがしないBikeはこれが初めてでした。
あとは、タンデムの快適さが素晴らしい。
Bikeに乗らない配偶者や当時小学生の息子がいうぐらいですから、間違いのないところです。
乾燥重量232kgが効いている感じですね。
どっしりとしていて、ちょっとした外乱などモノともしません。
そして、この安定感抜群の車体を、これまた実にトルクフルなエンジンが走らせます。
この重厚かつパワフルな味わいは、一度ハマるとクセになりますね。
ワインディングの切り返しはどっこいしょですが、それもまた気持ちよしです
というかこのBike、意外にも街乗りがイケるのでした。
あり余るトルクとよく切れるハンドルで、混雑した街なかでもストレスなく走れます。
CBを差し置いてしばらくの間、このカタナが足Bikeでした。
カタナを知るまでは、Bikeの車重は軽いに限ると思っていましたけど。
重たいBikeというのも、それはそれで実に味わい深く、そして快適なモノなのですね。
もちろん、180km/hで揺れがとまらなくなるということもありません。
実に安心して気持ちよくロングがこなせるオートバイでした。
そんなカタナの数少ない欠点は、荷物が積めないことでしたね。
足Bikeにこれは致命的ですので、振り分けバックをつけていました。
また、書類入れもないので、シート下にタッパで書類入れを増設しました。
トラブルは、クラッチワイヤー切れと燃料コック詰まり、それとメーター破損。
メーターは750のモノがついていて、笹谷トンネルで全開にしたら動かなくなりました。
ヤフオクで、240km/hメーターを落札して交換です。
それと、謎の電圧降下という現象もありました。
ブレーキをかけるとETCが落ちちゃって、これには閉口しましたね。
クラッチワイヤーは取り回しがちょっと微妙で、このあたりはCBが一枚上手でした。
ただ、エンジンは素晴らしかったです。
どんなときでも一発始動、そして超安定。これはCBを超えてましたね。
私が知る上で、最高最上級のエンジンです。
とにかく、このエンジンを筆頭に、当時のスズキの気合がヒシヒシと伝わるモデルでした。
そして、懐の深いBikeでした。
さすがは、メーカーの威信をかけたフラッグシップモデルですね。
乗り手も、どこか誇らしくなるようなオートバイでした。
2014年の秋に、カタナは元の持ち主のところへ戻っていきます。
4年半の付き合いで、私に多くの知見と想い出を残してくれたBikeでした。
今でも、あの重厚で誇らしいカタナの走りを懐かしく思い出すことがあります。
またいつか、あのようなBikeを手にしてみたいモノですね。
夢はまたいつしか叶うものと信じて、今もそう思い続けています。