ブルックスブラザーズ破綻

今回のコロナ禍で、破綻に追い込まれた企業が多々あります。
その中でも、一番印象的だったのは、米ブルックスブラザーズの破綻でした。
往年のファンとしては、とても残念なニュースでした。
でも、よく考えれば、これも時代の流れですね。

憧れのブランドでした。

米ブルックスブラザーズの破綻を知ったのは、パソコンのポップアップ画面からでした。
仕事の合間に目にした日経新聞の速報、正直ショックでしたね。
そして、コロナで倒れるぐらいに企業体力がなかったことにも驚きました。

いまは、ファストファッションの部屋着ばかりの私ですが、これでも若い頃は服好きでした。
生まれ育った東北の田舎町、そこの最新ファッションは駅前のジーンズ屋さん。
中学生で、初めてリーバイスを手にしたときは、とても嬉しかったです。

そんな環境下で、popeyeといった雑誌のグラビアから妄想ばかりが膨らむ日々。
間もなく、私はアイビーかぶれになっていきます。
高校卒業時には、仙台のデパートでJ-Pressのブレザー一式を揃えてもらいました。

そして、そんな私の憧れのブランドは、ブルックスブラザーズでした。
なんといっても、歴代のアメリカ大統領が愛用というのが格好良すぎですね。
アイビーファッションの終着駅、それがブルックスブラザーズという感じでした。

しかし、昭和の頃、東北にブルックスを販売しているお店はありませんでした。
初めて手にしたブルックスは定番のボタンダウンシャツ、東京は青山のお店で購入しました。
確か、社会人になって2年目の秋だったと思います。
素直に、嬉しかったですね。

30~40代にかけて愛用しました。

会社に就職して、最初の4年間は開発職でした。
そのときは、会社から制服が支給されていましたので、スーツとは無縁でした。

しかし、そのあと私は、営業に移ることになります。
27歳にして、ようやく憧れのスーツ姿のサラリーマンになりました。

その頃には、仙台の藤崎デパートでブルックスの取り扱いが始まっていました。
まずは手始めに、三つボダン中ひとつがけの紺スーツを購入です。
その後もボーナスのたびに、スーツやシャツ、ネクタイなどを取り揃えていきました。
あの頃は、スーツといったらブルックス一択という感じでした。

ブルックスのトラッドなスーツは、TPOを選ばず使用することができました。
丈夫で着心地も良く、大活躍です。
そして、営業に移って右も左も分からない私に、自信とプライドを与えてくれました。
営業職はとても不満でしたが、毎日ブルックスを着られるのは嬉しかったです。

気がついたら離れていました。

そんなお気に入りのブルックスでしたが、2000年に入ったあたりから様子が変わってきます。
たとえば、当時はやりのVゾーンが狭いブリティッシュスタイルのスーツ。
そんな、これまでの定番とは明らかに違う製品がラインアップされるようになったのです。

私としては、ブルックスのあまり流行に左右されないところが好きだったのですが。
これには、ちょっと違和感でした。

そして、この頃からスーツの値段も高額になってきます。
1990年代までは、たしか5~6万円台で買えるスーツもたくさんあったと思いました。
これが、軒並み8万円ぐらいにアップです。
独身貴族でもない身に、仕事で着るにはちょっと贅沢な感じでした。

そんなこともあり、45歳を過ぎたあたりでブルックスからは離れていきました。
いまは、スーツは地元の仕立て屋さんにお願いしています。
私好みのトラッドなスタイルで作ってもらって、2着で6万円ほどです。

もちろん、非常に満足できるクオリティーです。
というか、スーツは基本、オーダーメイドで作るべきモノなのかもしれないですね。

スーツ自体が不要になっています。

そして現在、私は在宅勤務のコールセンターオペレーターです。
仕事でスーツを着る機会は、ぶっちゃけ皆無です。
昨年、アワードに呼ばれたときに、数年ぶりに袖を通した感じでした。

また、プライベートの冠婚葬祭は、そのほとんどが礼服です。
本当に、スーツを着る機会は少なくなったと思いますね。
この先、よほど体型でも変わらない限り、スーツを買うことはないような気がします。

そもそも、スーツというのはあまり効率の良い服ではありません。
今後、私のような働き方の人が増えれば、まずます需要は減ることでしょう。
もちろん、この世からスーツがなくなってしまうということはないとは思いますが。
しかし、8万円の既製服というジャンルは、この先かなり厳しいと感じます。
米ブルックスの破綻は、そんな時代の変化の象徴なのかもしれないですね。

ただ、ブルックスのようなスーツには、ファストファッションにはない夢や憧れがあります。
かつて恋焦がれた者として、たとえ東京店ひとつになったとしても残ってほしいですね。

いや、逆にその方が良いのかな?

どのような形がベストなのかは、正直私にもわかりませんが。
ファンがブルックスに求めるモノを見極めて、これからも続いてくれることを願っています。