ドラマ「星降る夜に」と「夕暮れに、手をつなぐ」続編

ドラマ「星降る夜に」と「夕暮れに、手をつなぐ」も終盤に入ってきました。
こちら、双方の第三話を視聴したタイミングで、一度レビューを書いています。
そして、物語が進んだことで、以前とはまた違う感想がでてきました。
今回は前回レビューの続編ということで、また思うところを書いてみたいと思います。

北川ドラマの真骨頂はシンデレラストーリーでした。

まずは、何かと話題の「夕暮れに、手をつなぐ」です。
こちら、前回のレビューでは、広瀬すずちゃんは恋愛ドラマが苦手なのではとの考察でした。
そのようななか、第四話ですずちゃん演じる空豆に、未来の夢ができました。
これでようやくゴリゴリの恋愛ドラマ感が薄れ、すずちゃんらしい物語が動き出した感じです。

そして、この第四話を観て、そういえば北川先生のドラマは恋愛以前に、成り上がりのシンデレラストーリーが真骨頂だったことを思い出しました。古くは愛していると言ってくれから一昨年のウチカレまで、主人公たちは未来の夢を追いかけていて、大抵はクリエイターやアーティストとして成功します。そしてそれと引き換えに、恋愛は悲哀で終わるパターンが多いのですね。

となると、この第四話からが本番という感じで、空豆が天才過ぎてついていけないという感想も散見しますが、しかし演じるのがすずちゃんならあれだけの天才でも逆に違和感なく、やっと彼女のドラマらしくなったなぁと思っています。

ただ、その割にはいまひとつ盛り上がりに欠ける感じもあり、これについては空豆の師匠役である遠藤憲一さんのキャラがすこし弱いように思いますね。あれが、半分青いの豊田悦司さん演じる秋風先生のようなキャラだったら一気にブレイクしたような気もしますが、しかしそのような展開にはならないまま、淡々と物語は進んでいます。

でもまぁ、そもそもが、このぐらいのテンションを狙ったドラマなのかもしれません。もちろん、音と空豆の、あのこたつでのシーンや、あるいは空豆がセイラに語りかけるところなど、ハッとさせられる美しい場面もあるわけで、本来はこのようなきれいな画面と、そこにたたずむ登場人物の切ない心の機微を楽しむドラマなのかもしれないですね。

そして、ラスボスと思われる松雪泰子さんが登場することで、ドラマのテンションは一気に上がってくるものと期待しています。いち北川フリークとして、ひきつづき今後の展開を見守っていきたいですね。

気づけばシリアス展開の星降る夜に。

そして、同じ曜日に放映されている吉高由里子さん主演の「星降る夜に」、こちらは序盤の印象とは裏腹に、かなりシリアスな展開になっています。ぶっちゃけ、あのムロさん演じるクレーマーは早々に警察に突き出して欲しいところですが、でも、あれを含めての本作なのでしょう。

また、こちらは緩急、というか甘塩が激しいドラマでもありますね。クレーマームロさんのしょっぱい展開の直後に、今度は鈴と一星の超絶甘美なラブシーンといった流れで、どこかチョコレートと煎餅を交互に食べているような趣があります。このすこしジャンクな感じ味わいは文学的な夕暮れとも違っていて、なかなかおもしろいですね。

もちろん、ヒロインの吉高さんは相変わらず魅力的で、今回も相手役の魅力を二割増しにしています。ちなみにこの二割増しはあるネット記事の受け売りですが、要は一見強くしっかりしているようで、でも内面に脆さを抱えるといった女性を吉高さんがとても上手に演じるので、その相手役が二割増しで格好よくみえるのですね。今回の雪村鈴も正にそのような役柄ですし、まさに吉高さんのハマり役そのモノだと思います。

それにしても、第七話のエンディングは、なかなかよかったですね。一星や佐々木先生とキャンプを楽しみつつもムロさん演じるクレーマーを想い、「あの人もここにくればいいのに」とつぶやく鈴。そして、圧巻だったのが第八話のエンディング、ムロさんのあの演技には心を鷲掴みにされてしまいました。

第八話については、あれが実質的なクライマックスだと思いますし、このようなリアルで共感力の高いシーンひとつで、多少強引な展開や状況設定もまったく気にならなくなりますね。というか、このようなドラマが昨今のトレンドなのかと思ったりします。

ドラマティックではないドラマが流行りなのかもです。

前クールで話題だったsilentは、あまりドラマティックな作品ではありませんでした。ほぼ、あってないようなストーリー展開のなかで繰り広げられるピュアな感情の移ろいが、とても丁寧に描き出されているドラマでしたね。それがとても新鮮で、ですのであれだけウケたのだと思います。

そして、今クールの「星降る夜に」や「夕暮れ時に、手をつなぐ」も、もしかするとsilentのようなスタイルを狙っているのかもしれません。伝えたいのは、切ない思いを伝えるセリフやハッとする美しいシーンであって、ストーリーや状況設定はそれを紡ぐためのモノなのでしょう。そう考えると、夕暮れなどは本当によくできたドラマだと思います。

ただ、往年のドラマファンとしては、やはりドラマティックな恋物語への期待もあるワケで、その辺りの物足りなさが不満として出てくるのかもしれないですね。実際、星降るも夕暮れも、恋愛ドラマにもかかわらず、恋敵らしい恋敵すら登場しませんからね。

そういう意味では、今クールで人気の草なぎ君の罠の戦争などはとてもドラマティックですし、あとは友人から勧められて観始めた安藤サクラさん主演のブラッシュアップライフが古典的なほどドラマティックで、メチャクチャおもしろいです。

ブラッシュアップは、当初はタイムリープモノということで食わず嫌いをしていたのですが、実際に観てみると、ひとつひとつのエピソードがとてもリアルでストーリー展開にまったく違和感を感じません。実際にあのようなパラレルワールドがあるのかもと思わせるだけの説得力すらあります。かつ、「徳を積む」ことについての哲学的な意味までも考えさせられて、奥が深いですね。

ということで、今クールで一番ハマったドラマは、ブラッシュアップライフということになりました。そしてつくづく、今の時代に恋愛ドラマは難しいのかなと思ったりもします。とはいえ、「星降る夜に」も「夕暮れに、手をつなぐ」も奮闘しているとは思いますので、ここからのラストスパートに期待したいと思いますね。