贖罪のお話、二本立て
週末に映画一本と、小説を鑑賞しました。
個人的には、どちらも贖罪のお話のように感じ、せつない想いもダブルヘッダーでした。
今回は、そんなセンチメンタルな秋の一日を書いてみたいと思います。
映画を観てきました。
週末に、映画を観てきました。
きみの瞳が問いかけているという邦画です。
吉高由里子さんが主演、というところで観てきました。
あとは、Yahoo!映画の評点が高いところにも惹かれました。
ここの評点が4.0以上の作品は、まず間違いありません。
そして、その内容も評点通りでした。
9年前の韓国映画のリメイクですが、元々はチャップリンの街の灯がモチーフとのこと。
さすが、古典がベースだけのことはあって、安定した面白さです。
主演の吉高さんや横浜流星さんも、好演でした。
ちなみに、吉高さんは長らく不思議ちゃんのイメージでしたけど。
このような一途で健気な女性を演じさせたら、ホント天下一品ですね。
私、定時で帰ります以来、久しぶりに彼女の魅力が堪能できました。
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それでこの映画、一見ラブストーリーのようですが、実は贖罪のお話なのですね。
過去に一人の人間を死に追い込んだ男と、過失で家族を失った女性の贖罪の物語です。
女性は、失明の身ながら日々を健気に前向きに生きることによって。
そして男は、すべてを捨てて、最後は自らの命を賭すことで、それぞれに罪を償います。
そんな映画ですので、全編せつなさマックスなのも当たり前ですね。
古典的ギミックも相まって、終盤は胸が締め付けられるような展開です。
そして、やっぱり赦しはいいですね。
作品紹介で吉高さんが仰っていた通り、観たあとはやさしい気持ちになれる良作でした。
読書も楽しみました。
映画のあとは、Bikeでシーズン最後の走りをと思っていたのですが。
あいにくの天気のため、自宅でのんべんだらりんと読書をして過ごしました。
手に取ったのは、こだまさんの「ここは、おしまいの地」というエッセイ集です。
朝日新聞のWebPageを眺めていて、何気に目に留まった書評で知った作品でした。
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なにはともあれ、タイトルに惹かれましたね。
Amazonで検索するとkindle版がありましたので、さっそくダウンロードです。
そして、すっかりハマってしまいました。
ひと言でいうと、笑いが共振です。
たとえば、再就職した先での、コーヒー作りだめのくだりとか。
スマホ片手に、抱腹絶倒してしまいました。
こだまさんは、ネット大喜利で活躍されていた御仁とのこと。
なるほど、これだけ面白いのも納得ですね。
そして、行間からにじみ出る辛気臭さが心地よいです。
まさに、おしまいの地の面目躍如。
なんとも、独特な雰囲気の作品でした。
ということで、あっという間に読了です。
そして、ぜひ別の作品もということで、次にダウンロードしたのがこちらでした。
とぼけたタイトルとは裏腹の、せつない告白のお話でした。
次に手にしたのは、「夫のちんぽが入らない」です。
こちらは、こだまさんのデビュー作であり、そして代表作でもあるようですね。
それにしても、なんともとぼけた、そしてインパクトの強いタイトルです。
おしまいの地を読んだ限りにおいては、そんなに下ネタ好きの感じでもなかったのに。
でも、こちらも抱腹絶倒のエピソードが満載なのだろうと、期待して読み始めました。
そうしたところ、おしまいの地とはちょっと毛色が違う、せつない告白の物語なのでした。
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お話は、主人公の私が大学に進学したところから始まります。
この冒頭部分、地方大学の教育学部の雰囲気が、とてもよく描写されていて感涙です。
ちなみに、私は工学部ですが、児童文化研究会という場違いなサークルに所属していました。
もちろん、サークルのメンバーは、そのほとんどが教育学部生です。
なので、この教育学部の雰囲気が、とてもよくわかったりするのです。
実際、工学部と教育学部では、だいぶ雰囲気が異なりましたね。
工学部には私を含め、クルマやBike、あるいはコンピュータバカばかりでした。
偏向した自分の世界に自信満々という輩が、とにかく多かったです。
それに対して教育学部は、天然で不器用、でも純粋で誠心誠意な人が多かったですね。
特に女の子は、「夫の…」の主人公みたいな人たちばかりでした。
やはり、小学校の先生を目指すような方々ですからね。
自信過剰なオタク気質の工学部生とは、人間の根本的なところからして違うのでしょう。
ということで、主人公やその彼氏(のちの夫様)に、かつてのサークル仲間の姿が被ります。
とても懐かしく、そして愛おしい気持ちになりました。
大学を卒業して、主人公は憧れだった小学校の先生になります。
そして、激しく挫折して、罪を重ねる身に堕ちていきます。
あの行為に対して、罪を重ねるという表現が的確なのかどうかは分かりません。
あれがなければ間違いなく崩壊したのでしょうから、仕方のない事ではあります。
ただ、あの行為に対する贖罪が本作品なのかなと、個人的にはそう感じました。
せつなさとやさしさに包まれた、秋の休日でした。
「夫の…」は、基本的に作者のこだまさんの私小説です。
教員の夢破れたこだまさんは、その後、作家として成功されます。
病気など、いろいろと困難はありますが、夫様との仲睦まじい結婚生活は続いています。
最後は、たとえ夫のちんぽが入らなくても、人間万事塞翁が馬といったようなオチでした。
でも、もしかするとご本人は、まだそこまで割り切れていないのかもしれません。
作家活動のことをご家族が知らないところに、贖罪が続いているようにも感じました。
前述の映画のように、いつかすべてが赦されることをお祈りするばかりです。
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ということで、思いがけず贖罪物語のダブルヘッダーになってしまいました。
特に、「夫の…」は、ちょっと不意打ちでしたね。
霜月の寒空を見上げ、さすがの私も、センチメンタルマックスです。
でも、たまにはこんな感傷的な気分にどっぷりつかるのも悪くないですね。
いくら経済的に豊かになったところで、傷つく人はなくなりません。
そして、人は傷つくことでやさしくなれるのですね。
そんなことをあらためて思ってみた、秋の一日でした。