家計簿からExcelで複式帳簿-4【確定申告】

私の青白申告、複式帳簿はExcelです。
ネットで複式帳簿を学び、帳簿をExcelで作り上げました。
もちろん、完全無料です。

最終章は、減価償却について説明していきます。
これができると自宅や自家用車などの高額なモノが経費にできて、たいへんうれしいです。
内容的にもそんなに難しくありませんので、サクッとモノにしていきましょう。

10万円以上の備品は、分割して数年かけて経費にします。

減価償却については、このワンセンテンスがすべてですね。
たとえば、12万円のパソコンを買ったときは、以下のようになります。

  • 1年目:12万円 ÷ 4年 = 3万円(残り:12万円 - 3万円 = 9万円)
  • 2年目:12万円 ÷ 4年 = 3万円(残り:9万円 - 3万円 = 6万円)
  • 3年目:12万円 ÷ 4年 = 3万円(残り:6万円 - 3万円 = 3万円)
  • 4年目:12万円 ÷ 4年 = 3万円(残り:3万円 - 3万円 = 0円)

ザクっとこんな感じですね。
実際は、最後の年は1円残すのですが、まずはイメージをつかんでください。
対象が自宅でも自家用車でもパソコンでも、この基本構造は同じになります。

仕訳方法は以下の通りです。

  • まずは、購入時に借方科目で工具機器備品に購入額を入金
  • つぎに、そこから減価償却費で経費化
  • そして、残った金額を元入金で翌年に繰り越し

上記の意味が不明の場合は、こちらを読んでみてください。
念のために、以下に仕分けをまとめておきます。

借方科目貸方科目
パソコンを購入したとき工具機器備品事業主借
減価償却費で経費化するとき減価償却費工具機器備品
翌年、残金を繰り越しするとき工具機器備品元入金

もちろん、上記が工具機器備品なのは、対象がパソコンだからですね。
これが自宅なら建物、自家用車なら車両運搬具になります。

なお、一般的には購入金額のことを取得額と表現します。
以降は取得額で統一しますので、取得額=買ったときの金額だと思ってください。

現実は、もう少し複雑です。

これだけで減価償却ができれば苦労はしないのですが、現実はもう少し複雑です。
減価償却が複雑になる要因は、主に以下の5点です。

  • 償却期間が分からない
  • 取得額が償却金額で割り切れない
  • 年の途中に購入して使い始めた
  • 以前に購入したモノを事業用で使い始めた
  • 家事と按分する

それでは以下に、ひとつひとつ解決方法を案内していきましょう。

1.償却期間が分からない

減価償却するにあたって、償却期間は最も重要な項目ですね。
なぜなら、これで一回あたりの減価償却費が決まるワケですからね。

それで結論から言うと、これはもう耐用年数でググるですね。
たとえば、国税庁のWebPageなどをみて、調べるしかありません。
検索のコツとしては、【対象物の名前(スペース)耐用年数 】 でググるですね。

なお、実際の減価償却費は、取得額を耐用年数で割るのではなく、償却率をかけて求めます。
たとえば、耐用年数が4年のパソコンの償却率は0.25ですから、以下の通りです。

  • 12万円で買ったパソコンの減価償却費:12万円×0.25=3万円

割り算が掛け算になることで、割り切れない悩みから解放されますね。
具体的な償却率は、国税庁のこちらのページにまとめてあります。

それで、この償却率ですが、思いの外、内容が複雑です。
たとえば、同じモノでも取得日が平成19年3月31日以前とそれ以降では償却率が違います。
その他にも、いろいろな特例などがありますので、ここはよく調べることが肝要ですね。
というか、よく分からない場合は、素直に税務署に相談しましょう。
結局、それが一番確実で近道の方法です。

なお、償却率には定額法と定率法の2種類があります。
基本的に、在宅フリーランスの場合は定額法一択になります。
定率法は申請が必要だったりいろいろと面倒なので、ここは無視しておきましょう。

2.取得額が償却金額で割り切れない

単純に、以下のように処理します。
たとえば、パソコンの価格が110,753円だったときの処理ですね。

  • 減価償却費:110,735円×0.25=27,684円

そして、以下のように償却していきます。

  • 1年目:減価償却費:27,684円(残り:110,000円-27,684円=83,051円)
  • 2年目:減価償却費:27,684円残り:83,051円-27,684円=55,367円)
  • 3年目:減価償却費:27,684円残り:55,367円-27,684円=27,683円)
  • 4年目:減価償却費:27,682円残り:27,683円-27,682円=1円)

最終年は、前年に余った金額-1円が減価償却費になります。
要は、資産の額が減価償却費以下になったら1円残す処理をするということですね。
なお、減価償却費に小数点以下がでたときは、すべて切り上げになります。

3.年の途中に購入して使い始めた

この場合は、単純に月割りです。
たとえば、11万円のパソコンを7月に購入したときの初年の減価償却費は以下の通りです。

  • 110,000円×0.25×(12月-7月)÷12月=11,459円

あとは、以下のように処理をすればOKですね。

  • 1年目:減価償却費:11,459円(残り:110,000円-11,459円=98,541円)
  • 2年目:減価償却費:27,500円(残り:98,541円-27,500円=71,041円)
  • 3年目:減価償却費:27,500円(残り:71,041円-27,500円=43,541円)
  • 4年目:減価償却費:27,500円(残り:43,541円-27,500円=16,041円)
  • 5年目:減価償却費:16,040円(残り:16,041円-16,040円=1円)

最終年の処理は、償却金額で割り切れなかった場合と同じになります。
結局のところ、月割りしたの初年の残りを最終年に減価償却するということですね。

4.以前に購入したモノを事業用で使い始めた

これは、在宅を始める前に購入した自宅を経費にする時の必須項目ですね。
自宅の購入費用を経費にできると、かなりの節税になります。

それで、結論から言うと、この場合はスタートの金額が変わります。
要は、取得額から減価償却がスタートするわけではないということですね。

この場合は、取得額から在宅をしていない間の償却分を差し引きます。
そして、それをスタートの金額にします。

たとえば、1,000万円で自宅を買って、その5年後に在宅を始めた場合です。
まずは、在宅をしていない時の減価償却費を求めます。
ポイントは2つです。

  • 在宅をしていないときの耐用年数:通常の1.5倍
  • 在宅をしていないときの減価償却費の計算:旧定額法

くわしくは、国税庁のこちらのページを参考にしてください。
それで、上記を適用すると在宅してない時の減価償却費は以下のようになります。

  • 耐用年数:22年×1.5=33年 → 償却率:0.031※1
  • 在宅してないときの減価償却費:1,000万円×0.9×0.031=279,000円/年

在宅してないときの減価償却費は旧定額法になるので0.9をかけます。
なお、実際の在宅なし時の償却率は、国税庁のこちらのページに一覧があります。(※1)

あとは、取得額から在宅していない間の減価償却費を引けばスタート金額が確定ですね。
具体的な計算は、以下の通りです。

  • スタートの金額:1,000万円-279,000円×5年=8,605,000円

こちら、購入月が5月までのときは切り捨て、6月以降の場合は繰り上げになります。
たとえば、2010年7月に自宅を購入した時は、2011年に購入したことで計算します。

スタートの金額が決まれば、あとは通常の減価償却費で毎年償却していくだけですね。

  • 減価償却費:1,000万円×0.046=460,000円
  • 初年の減価償却:460,000円(残り:8,605,000円-460,000円=8,145,000円)
  • …以下、償却できる金額がなくなるまで続く

もちろん、初年は在宅を始めた月で月割りになります。
それと、購入が平成19年3月31日以前の場合は、本来の減価償却費も旧定額法で算出です。

このあたり、少し複雑ですが、以下の国税庁のページに詳しく解説があります。
並行して、参考にしてください。

なお、在宅を始めてから自宅を購入した場合は、これらの処理は不要です。

5.家事と按分する

これについては、以下の通りです。

借方科目貸方科目金額
購入時建物事業主借1,000万円
減価償却(事業分 15%)減価償却費建物69,000円
減価償却(家事分 75%)事業主貸建物391,000円

自宅の購入金額が1,000万円で、年々の減価償却費が46万円の場合ですね。
ここのポイントは、減価償却する時点で按分するということです。
そして、家事分は事業主貸で処理するということですね。

私は最初分からなくて、購入時の時点で按分するのかなと思っていました。
ここでも最強の勘定科目、事業主貸の効力が炸裂という感じです。

ここまで分かれば、だいたいOKです。

以上が、減価償却に関する必要最小限のTipsになります。
ここまでわかれば、自宅の経費化ができると思います。

自宅の経費化は大きいですよね。
上記の通り、購入金額が1,000万円、按分が15%で7万円近くが経費にできますからね。

同じように、自動車や冷蔵庫のような高額家電も経費化できます。
私のようなオペレータの場合、冷蔵庫も経費にできます。
喉をうるおす飲み物を冷やしておくというということで、事業用途になるのですね。

その他にも、減価償却で抑えておくべきポイントを下記しておきます。

1.旧定額法による償却

平成19年3月31日以前に購入したモノは、減価償却費の算出と償却方法が違います。
結論から言うと、

  • 減価償却費に0.9をかける。
  • 減価償却の残高が購入金額の5%を切った以降は、購入金額の5%が減価償却費

というルールです。
それでは、20万円のパソコン、償却率0.25で計算をしてみたいとおもいます。

  • 定額法の減価償却費:20万円×0.25=5万円
  • 旧定額法の減価償却費:20万円×0.25×0.9=4.5万円

実際の減価償却は以下の感じですね。

旧定額法の償却費残高現定額法の償却費残高
1年目45,000円155,000円50,000円150,000円
2年目45,000円110,000円50,000円100,000円
3年目45,000円65,000円50,000円 50,000円
4年目45,000円 20,000円49,999円1円
5年目10,000円10,000円
6年目9,999円1円

旧定額法では、5年目で減価償却費が購入金額×5%に変わります。
そして、償却期間が現行より2年長くなります。

ただ、これを適用する事例は、あまりないと思います。
なぜなら、パソコンのように耐用年数が短いモノは、もう償却が終わっていますからね。

計算方法が変わった平成19年は、すなわち2007年です。
2020年現在においては、耐用年数が13~20年のモノが該当するということです。

そして、耐用年数が20年以上、つまり償却率が5%以下のモノは適用外になります。
つまり、耐用年数が13~20年で、かつ平成19年4月前に購入のモノのみが対象です。
在宅フリーランスでどのようなモノが対象になるか、具体例が思いつきません。
ぶっちゃけ、かなりのレアケースになると思います。

2.消費税の取り扱い

購入金額に消費税をれるかどうかのお話です。
結論から言いますと、消費税込みで会計しているかどうか次第です。

そして、消費税を納めない業者の場合は、一律消費税込みでの計算になります。
要は、年間売上が1,000万円未満の事業者は、すべて消費税込みでOKということです。

3.たくさんの特例あり

ここまでは、10万円以下のモノは基本、減価償却ということでお話してきました。
しかし、現実は、30万までのモノなら一括で経費にできる可能性が高いです。

たとえば、青色申告の場合は30万円未満までなら一括で経費にできます。
それも、ひとつふたつだけではなく、トータルで300万円までOKです。

俗にいう、少額減価償却資産の特例ですね。
この特例、対象となる期間がありますので注意が必要です。
くわしくは、国税庁のこちらのページを確認してください。

また、10万円~20万円未満のモノは、一括償却資産で処理ができます。
こちらは、何でもサクッと3年3回で償却させるやり方ですね。

この一括償却資産は有名な手法で、ググると事例もたくさん出てきます。
高いパソコン買ったときは、これが一番現実的な処理方法だと思います。

使える権利は最大限に使っていきましょう

ということで、確定申告-減価償却編が完了です。
あらためて、これができるとたくさんの経費が計上されて有利ですね。

節税という言葉はあまり好きではありませんが、経費計上は納税者に認められた権利です。
持てる権利は最大限に利用して、かしこく確定申告していきましょう。