ダメなシステムは全ての人を不幸にする

10万円の特別給付金を電子申請しました。
そして、そのシステムのあまりのダメさ加減に愕然としました。
ここまでダメなシステムも、近年珍しいですね。
どうしてこんなにダメなのか、少し考察してみました。

やっと申請書類が届きました。

今年の4月20日に閣議決定されたという特別給付の10万円。
それから約ひと月後の5月14日に、ようやく山形の我が家にも申請書が届きました。
コロナ騒動も収束のステージですが、景気対策としては良いタイミングかもしれません。

届いた封筒には説明書と申請書、そして返信用の封筒が入っています。
申請書は、実にわかりやすいです。
記入だけなら5分、身分証明書や通帳の貼り付けを含めても、30分で作成できそうです。

ただ、説明書を見ると電子申請もできるとのことです。
投函することがない電子申請の方が、より便利そうですね。

e-Taxをするにあたり、ICカードリーダも購入済みです。
説明書には、マイナポータルというサイトで手続きと書いてありました。
さっそく、マイナポータルで検索してアクセスしてみます。
そして、ここから苦闘の始まりとなるのでした。

ICカードが認識できない!

サイトにアクセスすると、まずは特別給付金申請の大きなボタンが目に入ります。
期待をもってクリックすると、まずは住んでいる市町村の確認画面がでてきます。

ところが、どこをどう探しても山形市が見つかりません。
あれやこれや調べたところ、山形市の電子申請は翌15日からとのことでした。

だとしたら、最初から説明書に書いておいてほしいモノです。
これがわかるまで、30分も費やしました。
最初からつまづきましたが、これなどはまだ序の口でした。

翌日、気を取り直して再チャレンジです。
市町村の確認画面をクリアーすると、今度はPCの環境をいろいろと確認させられます。

紙の申請でよくあるチェックシートという感じですね。
これなど、うまくいかない時のオプションでいいと思うのですが…。
このあたり、実にお役所的なシステムです。

PC環境のチェックをクリアーして、さてその次からが問題です。
なんと、chromeがICカードを認証してくれず、サイトにログインができません。

どうやら、マイポータルAPというアドインソフトがうまく動かないようです。
chromeを再起動したりマイポータルAPを入れ直ししても認証できません。

ちなみにこのマイポータルAP、1月にe-Taxした時は問題なく動いていました。
公的個人認証サービスのアプリは、問題なくカードを認識します。
あきらかに、コケているのはマイポータルAPですが、もはや手立てはありません。

一応、エラーを告げるダイアログボックスにサポートの電話番号は記載されています。
しかし、これでは窓口がパンクしているのは火を見るよりも明らかでしょう。

挙句、これが別のPCだとすんなり認証できたりします。
Windowsのリビジョンなども同じなのに、ほとんど謎ですね。

そんなこんなで格闘すること2時間あまり、結局、別のPCで申請しました。
紙の申請なら30分のところ、ここまででトータル2時間のロスです。

※現在、このマイポータルAPの不具合は解消されているみたいです。

ログインしてからも面倒です

サイトにログインしてからも、かなり面倒です。
まずは、氏名や住所、生年月日などの入力画面が出てきます。

これもまた、謎仕様ですね。
このような個人情報が紐づいてのマイナンバーカードだと思うのですが。
なぜに、ここでまた入力が必要なのか、皆目意味不明です。

一応、マイナンバーカードから読み取りという機能はあるようです。
この緑色のボタンをクリックしてみます。

そうしたところ、個人情報が一括で入力されたようです。
さっそく次へのボタンをクリックすると、なんとエラー発生です。

この一括入力、フリガナと郵便番号は反映されないようです。
この辺りで、かなり苦痛になってきました。

その後も、家族の情報や銀行口座の入力が続きます。
口座は仕方ないとして、家族情報ぐらいは自動的に反映して欲しいモノです。

そして一番驚いたのが、通帳画像のアップロードです。
一体、どうしてこんなモノが必要なのでしょう。

もちろん、アップロードしないことには先に進めません。
スマホで通帳の写真を撮って、PCに転送してアップです。
もし、画像の取り扱いが不慣れな人なら、ここでドロップアウトでしょうね。

その後も、ICカードによる電子認証などが続きます。
ICカードの認証自体が不安定ですから、もうドキドキモノです。
このレベルになると、PCを相当使える人でないと無理でしょう。

ログインしてから小一時間、ようやく申請が完了しました。
前日からのトータルで3時間半の苦行でした。
紙の申請より7倍も時間がかかる電子申請、はっきりいってクソですね。

時代遅れすぎるシステムです。

まずは、ICカードリーダを使った認証というところがダメですね。
非接触型のICカード、もはや20年前のデバイスです。

現在は、この手はスマホアプリ化がトレンドですね。
そんな時代に、SONYのカードリーダをPCにUSB接続、、、あり得ないです。

挙句、この認証システム自体がとても不安定です。
常にうまくいくという保証が、どこにもありません。

ブラウザーのアドオンで動くところが微妙ですね。
これでは、更新のタイミングでダメになることも多々あることでしょう。
私の場合も、春の確定申告のときはOKで今回はNGでした。

大体に、このようなデバイスは、専用システムの発想ですね。
たとえば、e-Taxシステムや公的個人認証サービスなどなど。
この発想自体が、もはや30年前の考え方です。

今どき、端末にアプリをインストールは必要最小限です。
もちろん、それに則って今回のシステムもWeb上で動くようにはなっていますけど。
しかし、カードリーダーのような前時代的なモノを引きずっているのがなんともです。
ここがまず、このシステムをダメにしている要因の一つですね。

ユーザーインターフェースも最低です。

次にダメなのは、ユーザーインターフェースです。
繰り返しますが、この手のシステムで氏名や住所を入力させるのはマジメにアウトです。
ECの世界では、10年前からの常識ですね。

そもそも、PC前提というところからしてアウトですね。
現代は、ネットはスマホが主流です。
そして、今回なら、最低でも以下の手順で申請完了がマストです。

  • 郵送された申請書に印刷されているQRコードをスマホで読む。
  • 出てきた専用サイトに、個人番号とPWでサインイン
  • 登録済みの口座から振込希望のモノを選んで申請ボタンをタップ

以上の3ステップ、時間にして1分ですね。
これで初めて、電子申請する意味があるということになると思うのです。

このシステムを作った人は、Amazonを利用したことがないのでしょうか?
ユーザーインターフェースの大切さについて、完全に理解不足です。

実は、使いやすさの面からすれば、電子申請は不利なのです。
いろいろと準備が必要な電子申請に対して、紙はボールペン一本で始められますからね。

なので、電子申請には洗練されたユーザーインターフェースが必須なのです。
EC界でAmazon独り勝ちの要因が、そのインターフェースにあるのは有名な話ですね。
厳しい言い方ですが、使いやすさの追求が本当に甘すぎると思います。

そして、このシステムの最もダメな部分は銀行通帳の画像添付でしょうね。
いまどき、銀行口座の登録をするのに、どうしてこんなモノが必要なのでしょう?

これについては、受け取る方も地獄を見るだろうなと思ったら案の定でした。
郵送より手間暇がかかるという、本末転倒の悲劇です。
二人一組で読み上げしながら申請内容を確認するとか、あり得ないですね。

挙句、電子申請を中止する自治体まで出てくる有様。
正に、正真正銘のダメシステムですね。
関わる人間を不幸にするだけの、悪魔のような代物です。
こんなモノに多額の税金が投入されたかと思うと、まったくもって腹立たしい限りですね。

結局は、システムに対するビジョンの問題だと思います。

このシステムがどうしてここまでダメなのか、理由は明確です。
それは、導入の目的が間違っているからです。
いや、間違っているよりかはゆがめられているという感じですね。

ずばり、組織の体裁を整えるバイアスが高すぎます。
「電子申請もできますよ」と言えるようにしておくためのモノ感がですぎています。

システムというのは、組織の内情を映し出す鏡です。
このシステムからは、体裁第一主義という組織の内情がにじみ出ていますね。
これでは、使い勝手の良いシステムになろうハズもありません。

このシステムも、どこかにアウトソーシングされたモノと思われます。
受託者の苦労がしのばれますね。
想像するに、ECひとつ使ったことがない50~60代の管理職がいろいろ槍を入れたのでしょう。
そして、これらの管理職は心底で「世の中、紙で十分」と思っているのかもしれないです。

これでは、絶対に使えるシステムにはならないですね。
これら管理職が引退する時分、あと10年は電子申請は考えない方が良いようです。

今回のダメさ改善のため、政府は口座登録の義務化を検討しているようです。
ぶっちゃけ、これも完全に的外れですね。

そもそも、今回の申請システムは、ただのポータルサイトのようですね。
各自治体ごとに申請内容を確認とか、本当に謎すぎるシステムです。

いずれにしても、関わる人すべてを不幸にするシステムは社会悪以外の何物でもありません。
いったい、誰の何のための何のシステムなのか?
総務省を含めた関係者各位には改めて、ビジョンの再考と再構築を切に願うばかりです。